今日の課題図書:鯖猫長屋ふしぎ草子
【鯖猫長屋ふしぎ草子】著:田牧大和
鯖縞模様の猫が一番いばっている長屋で起きる事件を、猫さんとその飼い主である絵描きの青井亭拾楽が解決していくというお話。一つの事件ごとに短編のようになっているからさらっと読めて、でも最後には全てが繋がって、読了感はすっきり。謎解きと江戸時代あたりの人情ものが好きな人にはおすすめです。
今回はふら〜っと本棚を眺めている時に発見したソフトカバーの単行本を適当に手に取り、中身も見ずに借りてきたわけですが、予想外に好みの内容でした。もともと軽く読める時代物は好きだし、ミステリーも大好物なので、タイトルからして自分好みだろうなあとは思っていましたけど。
謎解き要素については、クイーンとかみたいに読者への挑戦状があるわけではなく、むしろ各話の始めに「問はず語り」として主人公以外の視点での背景描写があるので、読者はある程度背景を把握しつつ、主人公が真相に迫っていくのを追いかける形になります。こういうパターンって他に何かあったかな…あったような気がするんですけど、ちょっとこれという例が思いつかないのでひとまず保留。
とにかく、全然謎解きできなくてストレス!というようなお話ではありません。話の展開もわかりやすいし、でもすぐに先の展開が読めすぎてつまらないということもなく、私にはとても良いバランスでした。
なお、この本のタイトルにもある気の強い猫の大将と、飼い主のはずなのにその子分みたいになっている、ひょろっとしたおじさん(イメージ)の拾楽さんが主人公になるわけですが、この組み合わせ、良いです。私はこういうへらへらっとしてみせるおじさんが好き。そしてそんなおじさんをぺしぺしひっぱたく動物というのも好き。
人間は猫さんに振り回されるものですよね、と大将に爪を立てられたり怒られたりしている描写があるたびにほのぼのします。
この鯖猫長屋ふしぎ草子、どうやらシリーズ物らしく、2019年6月現在で6巻まで刊行されている模様。近所の図書館には一冊しかなかったような気がしますが、次行った時に続きも探して読みたいです。なければ買う。
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おまけ
近めの時代物はこの辺りかなあ…
・ぼんくら 宮部みゆき
長屋から一人二人と人が減っていく。最初はある兄弟の家に殺し屋が押し入って兄が殺害されるというところから始まります。
読んだのがだいぶ前なので記憶が曖昧なのですが、長屋が舞台の時代小説×ミステリーです。日暮らし、おまえさん、に続きます。宮部みゆきさんの時代小説はとても好きなのでどれもお勧めですが、「ぼんくら」は一番記憶に残っているのでたぶん一番面白かったんだと思います。